東海道五十三次の中で、唯一「歩けない」区間があります。
宮宿から桑名宿までの「七里の渡し」。海上約27km、所要約4時間の渡船区間です。江戸時代、旅人は熱田の渡し場で船に乗り、伊勢湾を横断して桑名に上陸しました。東海道で最も長い海上ルートであり、天候に左右される最も不安定な区間でもありました。
現在、渡船は廃止されています。この記事では、七里の渡しの歴史と、現在の東海道ウォーカーがこの区間をどう渡るかをまとめます。
七里の渡し 基本データ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 区間 | 宮宿(熱田)→ 桑名宿 |
| 距離 | 海上約27km(七里=約27km) |
| 江戸時代の所要時間 | 約4時間(順風時) |
| 現在の移動手段 | 電車(名古屋→桑名 約20〜30分) |
| 徒歩代替ルート | 佐屋街道(約40km・上級者向け) |
| 最終確認日 | 2026年7月 |
七里の渡しとは何だったのか

七里の渡しは、東海道の宮宿(現・名古屋市熱田区)と桑名宿(現・三重県桑名市)を結ぶ渡船航路です。「七里」は距離の単位で、約27kmに相当します。
なぜ陸路ではなく海路だったのか。伊勢湾の西岸は大きな河川(木曽三川)が何本も流れ込んでおり、陸路で桑名に向かうと何度も渡河が必要でした。船で一気に海を渡る方が、当時の技術では早くて確実だったのです。
ただし海路にはリスクもありました。悪天候で欠航すると宮宿で数日間足止め。嵐に遭って命を落とす旅人もいました。船酔いや海賊(水上盗賊)の危険もあり、旅人にとっては東海道最大の不安要素でした。
運賃は一人あたり約100文(現在の2000〜3000円程度)。船は「七里渡船」と呼ばれる定期便で、朝の満潮時に出航するのが一般的でした。
現在の東海道ウォーカーはどう渡るか
現在、七里の渡しの渡船は廃止されているため、以下のいずれかで桑名宿に移動します。
方法1:電車で移動(最も一般的)
・名鉄名古屋駅 → 近鉄名古屋駅 → 近鉄桑名駅(約20分)
・JR名古屋駅 → JR桑名駅(関西本線・約25分)
・運賃:約500〜600円
ほとんどの東海道ウォーカーはこの方法を選びます。宮宿の七里の渡し跡で記念撮影し、電車で桑名に移動して桑名宿から歩きを再開するパターンです。「渡船区間はワープ」と割り切れるなら最も効率的です。
方法2:佐屋街道を歩く(上級者向け)
七里の渡しの陸路代替ルートとして江戸時代から存在した「佐屋街道」を歩く方法です。宮宿から佐屋宿を経由し、木曽川を渡って桑名に至る約40kmのルート。所要時間は8〜10時間です。
海が怖い旅人や、悪天候で渡船が欠航した際の迂回路として使われていました。現在も全行程を歩くことは可能ですが、約40kmの長距離になるため上級者向けです。多くの東海道完歩者は電車を選んでいます。
渡し場跡の見どころ

宮宿側(出発地):
・七里の渡し跡(宮の渡し公園)— 常夜灯と時の鐘の復元
・熱田神宮 — 渡航安全の祈願地
桑名宿側(到着地):
・七里の渡し跡 — 伊勢国一の鳥居が立つ渡し場跡
・蟠龍櫓(ばんりゅうやぐら)— 桑名城の復元櫓。渡しから上陸した旅人が最初に見た建物
・桑名城跡(九華公園)— 渡し場に隣接する城跡
アクセス
宮宿側の最寄り駅:
・熱田駅(JR)/ 神宮前駅(名鉄)— 七里の渡し跡まで徒歩10分
桑名宿側の最寄り駅:
・桑名駅(JR・近鉄)— 七里の渡し跡まで徒歩15分
七里の渡しの歴史的背景
七里の渡しは東海道唯一の海上路です。宮宿(熱田)から桑名宿まで約27km(七里)を船で渡る区間で、陸路では濃尾平野の河川を何本も越えなければならないため、船による渡海が選ばれました。
江戸時代、この渡しには多くの船が就航し、大名行列の御座船から一般旅人の乗合船まで様々な規模の船がありました。天候次第では何日も足止めを食らうこともあり、宮宿には「船待ち」の旅人で旅籠が常に満員だったと記録されています。
現在は渡船は廃止されていますが、宮宿側(熱田区七里の渡し公園)と桑名側(七里の渡し跡)にそれぞれ常夜灯が復元されています。東海道を歩く人は、かつて旅人が船に乗った場所と降りた場所の両方に立てるわけです。
現在のルート選択肢
東海道を通しで歩く人にとって、七里の渡し区間の処理は悩みどころです。渡船がない以上、以下のいずれかを選ぶことになります。
・佐屋街道経由(徒歩):宮宿から佐屋街道を歩き、木曽川を渡って桑名に至る陸路。約30km
・電車移動:名鉄・JR・近鉄を乗り継いで桑名へ。約1時間
・船のイベント利用:年に数回、七里の渡しの再現イベントで船が出ることがある
純粋な「東海道歩き」にこだわるなら佐屋街道経由が正当ですが、30kmの回り道になるため、多くの人は電車移動を選んでいます。どちらを選んでも正解です。
管理人のひとこと
七里の渡しは「歩けない区間」ですが、だからこそ想像力が試される場所です。
宮宿の渡し場跡で常夜灯を見上げ、桑名の渡し場跡で伊勢国一の鳥居をくぐる。この2つのポイントに立つだけで、江戸時代の旅人が感じた「海を渡る」緊張感が少し伝わってきます。
電車で20分の距離を、船で4時間かけて渡った時代。そのことを噛みしめながら桑名駅のホームに立つと、東海道の歴史の重みを感じます。
まとめ
七里の渡しは東海道唯一の長距離海上区間です。現在は電車で20〜30分で渡れますが、宮宿側・桑名側それぞれの渡し場跡は必ず立ち寄ってください。東海道歩きの中で最も「江戸時代の旅」を想像できる場所です。
関連リンク
・出発宿場:宮宿

・到着宿場:桑名宿



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