この区間を歩いているとき、頭の中には常に「明日」のことがあります。

長久保宿から和田宿まで8km。標高差は170m。数字だけ見れば何でもない道です。しかしこの区間を歩くほとんどの人は、翌日に中山道最大の難所・和田峠(22km・標高差800m・補給ゼロ)を控えています。
だからこの8kmは「明日のために今日できること」を整える時間です。体力を温存し、和田宿に早めに着いて準備を万全にする。そういう位置づけの区間です。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 区間 | 長久保宿 → 和田宿 |
| 距離 | 8km |
| 所要時間 | 約1時間45分(時速4.5km換算・緩い登りのため) |
| 難易度 | ★★☆☆☆(緩やかな登り・危険箇所なし) |
| 標高差 | 登り約170m(650m→820m) |
| 補給 | 区間内ほぼなし。長久保宿で事前に確保 |
| トイレ | 長久保宿内・和田宿内のみ |
| 最終確認日 | 2026年7月 |
依田川に沿って山が近づく道
長久保宿を出ると、依田川(よだがわ)の上流に向かって道が伸びています。川沿いの谷が徐々に狭くなり、両側の山が少しずつ迫ってくるのを感じながら歩く区間です。
前半は集落の間を縫うように進みます。田畑と民家が交互に現れ、長野の山里らしい穏やかな風景です。後半に入ると家の数が減り、代わりに山の木々が道の両側に増えてきます。「山に入っていく」感覚を体が先に感じ取ります。
道の勾配は緩やかで、歩いていて「登っている」と強く意識する場面は少ないです。しかし8km歩き終えて和田宿に着くと、標高が170m上がっていたことに気づきます。じわじわと高度を稼ぐ道です。
補給とトイレ — 長久保宿で全て済ませる
補給の現実
この区間の最大の注意点は補給の薄さです。長久保宿を出ると、和田宿到着までの8kmにコンビニはおろか、確実に利用できる商店がほぼありません。自販機が1〜2台ある程度です。


長久保宿内に商店があるので、飲料と行動食はここで確保してください。8kmなので大量に必要ではありませんが、夏場は水分を多めに持つと安心です。
さらに重要なのは、翌日の和田峠越えの準備です。和田宿にも補給できる場所は限られるため、和田峠越え用の食料・水分(2L以上)を長久保宿で購入しておく人もいます。荷物は重くなりますが、翌朝の安心感が違います。
トイレ
区間内にトイレはありません。長久保宿の公衆トイレ(一石栃白木改番所付近)で済ませてから出発してください。次のトイレは和田宿の公衆トイレです。8kmで2時間弱なので、出発前に済ませれば問題ありません。
見どころ
依田川の渓流
道沿いに流れる依田川は、上流に向かうにつれて水が澄み、渓流の表情に変わっていきます。夏場は涼しい川風が心地よく、川のせせらぎを聞きながら歩く時間は穏やかです。
唐沢の集落
長久保と和田の中間あたりにある唐沢の集落は、山里の雰囲気が色濃い場所です。古い民家の板壁、石垣、蔵。生活の中に中山道が溶け込んでいる風景があります。
男女倉口の一里塚跡
区間内に一里塚の跡があります。中山道を歩いていると一里塚に出会うたびに「また一里進んだ」と実感できる目印です。江戸時代の旅人も同じ感覚だったのでしょう。
注意点
この区間に大きな危険箇所はありません。道は概ね明瞭で、車道と並行する区間も歩道が確保されています。
ただし以下の点は頭に入れておいてください。
・国道142号と並行する区間で車の交通量がある
・後半は山の中に入るため、日暮れが早い(冬場は15時以降暗くなり始める)
・熊の生息域に近づいていく。熊鈴は和田峠用に持っていると思いますが、この区間から装着しておくと安心
宿泊 — 和田宿に前泊する
この区間を歩く人の多くは、和田宿に泊まって翌朝の和田峠越えに備えます。和田宿に早めに到着して、十分な睡眠を取ることが和田峠攻略の第一歩です。
和田宿の宿泊:
・民宿みや(和田宿内・要予約)
・かわちや(和田宿内・歴史ある旅籠の末裔)
・選択肢が少ないため、必ず事前予約してください
長久保宿に泊まる場合:
・長久保宿内の民宿(要確認)
・翌日は長久保→和田(8km)+和田峠越え(22km)で合計30kmになるため、体力に自信がない場合は和田宿泊まりが無難
アクセスとエスケープルート
起点(長久保宿):
・長久保バス停(長和町巡回バス)— 上田駅から約50分
・バスの本数が少ないため時刻表を事前確認
終点(和田宿):
・和田バス停(長和町巡回バス)— 上田駅方面へ約1時間
・車の場合は和田宿周辺に駐車スペースあり
エスケープルート:
8kmの緩い道のため、途中離脱が必要になることはまずありません。万が一の場合は国道142号に出ればバスが通ります(本数極少)。

管理人のひとこと
和田峠を越える前日の午後、この道を歩きました。天気は曇りで、山のシルエットが灰色の空に溶けていました。
歩きながら考えていたのは、ほとんど翌日のことでした。水は2L持ったか。食料は足りるか。天気はどうか。靴紐は大丈夫か。そんなことを反芻しながら、足だけが淡々と前に出ていた気がします。
和田宿に着いたのは15時頃。宿に荷物を置いて、翌日の装備をチェックして、近所を少し歩いて、17時には夕食を食べて就寝。あの夜は不思議と緊張感はなく、「明日やるしかない」という腹の据わった感覚で眠りに落ちました。
和田峠の前に、この8kmで準備を整える
長久保宿〜和田宿は8km・約2時間の穏やかな区間です。危険もなく、道に迷う心配もありません。しかしこの区間の意味は「翌日の和田峠に向けて、体力と装備と精神を整えること」にあります。
無理をせず、補給を確認し、和田宿に早めに着いて休む。それがこの8kmの正しい歩き方です。
関連リンク
・出発宿場:長久保宿

・到着宿場:和田宿

・前の区間:芦田宿〜長久保宿

・次の区間:和田宿〜下諏訪宿


コメント