宮宿から桑名宿は、東海道五十三次の41番目と42番目の宿場を結ぶ区間です。
この区間は東海道唯一の海上路「七里の渡し」で結ばれており、現在は徒歩で直接渡ることができません。
江戸時代には伊勢湾を渡る渡船が運航され、旅人は約7里(27km)の海路を約4時間かけて移動しました。
東海道の中で最も長い渡船区間であり、今切の渡し(舞阪〜新居間・約4km)とは比較にならないスケールの海上移動です。
本記事では、七里の渡しの歴史と現在の渡り方、東海道歩きにおけるこの区間の位置づけを解説します。
本記事は実際に徒歩で通過した際の情報や作成時点での最新情報をもとに作成しています。本記事は区間内の実在情報のみを精査して掲載しています。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 区間 | 宮宿 → 桑名宿 |
| 距離 | 約7里(27km)※満潮時の陸地沿い航路 |
| 移動手段 | 渡船(江戸時代)/電車(現在) |
| 所要時間 | 渡船:約4時間(江戸時代)/JR関西本線:約30分・近鉄:約20分(現在) |
| 徒歩通行 | 不可(海上区間のため陸路なし) |
| 最終確認日 | 2026年7月 |
七里の渡しとは
七里の渡し(しちりのわたし)は、東海道の宮宿(現・名古屋市熱田区)と桑名宿(現・三重県桑名市)を結ぶ海上渡船のことです。
移動距離が7里(約27km)であったことからこの名がつきました。
ただし干潮時は浅瀬を避けるため沖回り航路となり、約10里(39km)に延びることもありました。
東海道の正道(本街道)において、幕府が公的に設定した海上路は「七里の渡し」と「今切の渡し(舞阪〜新居間)」の2カ所のみです。
七里の渡しは今切の渡し(約4km)と比べて圧倒的に距離が長く、東海道最大の海上区間でした。
所要時間は通常約4時間でしたが、天候・潮の干満により3〜6時間と大きく変動しました。
海難事故も発生しており、旅人にとっては東海道最大の難所の一つでした。
歴史と変遷
■ 鎌倉・室町時代
七里の渡しのルートは、東海道の宿駅制度が設けられる以前から利用されていました。
壬申の乱(672年)の際に大海人皇子(後の天武天皇)の一族が桑名から海路で尾張に渡ったという伝承もあります。
■ 慶長6年(1601年)
東海道の宿駅制度が整備され、宮宿と桑名宿の間は正式に七里の渡しで通行することが定められました。
木曽三川(木曽川・長良川・揖斐川)の河口部は湿地帯が広がり、陸路での通行が極めて困難だったためです。
■ 江戸時代を通じて
七里の渡しは東海道の大動脈として機能し、宮宿・桑名宿は渡船場として大いに栄えました。
旅籠の数はそれぞれ東海道1位(宮宿248軒)・2位(桑名宿120軒)を誇りました。
荒天時は渡航が中止され、宮宿で「日和待ち」をする旅人が滞在しました。
■ 代替ルート「佐屋路」
海上路を避けたい旅人のために、陸路の佐屋路(佐屋街道)が東海道の脇街道として設けられました。
宮宿→佐屋宿→三里の渡し→桑名宿というルートで、海上区間が短くなる代わりに距離は長くなりました。
■ 明治以降
1895年(明治28年)に関西鉄道(現JR関西本線)が開通し、七里の渡しは次第に廃れました。
現在は渡船は運航されておらず、電車での移動が一般的です。
渡船の仕組み(江戸時代)
■ 乗船場所
宮宿側は熱田神宮南の堀川沿いにあった渡船場から乗船しました。
現在の「宮の渡し公園」の場所がほぼ当時の渡船場に相当します。
常夜灯が船の出入りを導く目印として設置されていました。
■ 下船場所
桑名宿側は桑名城の脇にある渡船場に到着しました。
現在の「七里の渡し跡」(揖斐川沿い)が当時の場所です。
鳥居が建てられており、伊勢国の玄関口であることを示していました。
■ 航路と所要時間
満潮時は陸地沿いの航路で約7里(27km)・所要約4時間。
干潮時は浅瀬を避けて沖回りとなり、約10里(39km)に延長されました。
天候・風向き・潮流により所要時間は3〜6時間と大きく変動しました。
■ 渡船の運航
大小様々な渡し船が運航され、大きなものでは数十人が乗り込めました。
荒天時は「日和待ち」として渡航が中止され、旅人は宮宿で足止めされました。
海難事故も発生しており、旅人にとっては不安の大きい区間でした。
現在の渡り方
現在、宮宿から桑名宿へ海路で渡る手段はありません。
東海道歩きでこの区間を通過する場合、以下の方法があります。
■ 方法①:JR関西本線を利用(推奨)
名古屋駅 → 桑名駅(快速で約20分・普通で約30分)
最も一般的で効率的な方法です。
宮宿(熱田)からはまず地下鉄で名古屋駅に出て、JR関西本線に乗り換えます。
■ 方法②:近鉄名古屋線を利用
近鉄名古屋駅 → 桑名駅(急行で約20分)
JRと同様に効率的です。本数が多いのが利点です。
■ 方法③:佐屋路(佐屋街道)を徒歩で迂回
七里の渡しの代替として江戸時代から存在した脇街道です。
宮宿→岩塚→万場→佐屋→三里の渡し(現在は橋で通過可能)→桑名宿というルートです。
距離は約30km以上になりますが、「全区間徒歩」にこだわる方が選択する方法です。
一部の東海道歩きの方はこのルートを歩いています。
■ 方法④:東海道あるき遊船(不定期イベント)
七里の渡しを再現する遊覧船が不定期で運航されることがあります。
運航情報は名古屋市・桑名市の観光協会で確認してください。
見どころ
■ 宮の渡し公園(宮宿側)
七里の渡しの出発地点跡です。
常夜灯・時の鐘が復元され、当時の渡船場の雰囲気を再現しています。
堀川沿いに整備された公園で、東海道歩きの大きな節目として必ず訪れてください。
■ 七里の渡し跡(桑名宿側)
桑名宿の渡船場跡で、揖斐川沿いに位置します。
伊勢国の玄関口を示す鳥居が建てられており、「伊勢国一の鳥居」とも呼ばれます。
ここから先は伊勢の国。東海道の旅人が最初に見た伊勢の景色です。
■ 歌川広重「東海道五十三次 桑名 七里渡口」
広重は桑名宿の浮世絵で七里の渡しの到着シーンを描いています。
桑名城の櫓と渡船が描かれた構図で、現地で同じ方向を眺めると歴史の対比を楽しめます。
■ 熱田神宮(宮宿側)
七里の渡しに乗る前に参拝するのが江戸時代の旅人の習慣でした。
航海の安全を祈願する場所として、今も変わらぬ荘厳な雰囲気を保っています。
東海道歩きにおける位置づけ
七里の渡しは、東海道歩きにおいて「歩けない最大の区間」として知られています。
今切の渡し(舞阪〜新居間・約4km)と比べて、七里の渡しは約27kmと圧倒的に長い海上区間です。
多くの東海道歩きの方は以下のように対応しています:
・JR関西本線または近鉄名古屋線で桑名駅まで移動し、桑名宿から歩行を再開する(最も一般的)
・佐屋路(佐屋街道)を徒歩で迂回する(「全区間徒歩」にこだわる方向け・約30km以上)
・不定期の遊覧船イベントで当時の渡船ルートを体験する(機会は限られる)
いずれの方法を選んでも、宮宿側の宮の渡し公園と桑名宿側の七里の渡し跡は必ず確認しておくことをおすすめします。
出発地と到着地の両方を見ることで、7里の海上を渡った旅人の気持ちを追体験できます。
今切の渡しとの比較
東海道には2カ所の渡船区間がありますが、規模は大きく異なります。
■ 今切の渡し(舞阪宿〜新居宿)
距離:約4〜6km(浜名湖口)
所要時間:約30分〜1時間
水域:浜名湖口(比較的穏やか)
■ 七里の渡し(宮宿〜桑名宿)
距離:約27km(伊勢湾)
所要時間:約4時間(3〜6時間変動)
水域:伊勢湾(外洋に近い・荒れることがある)
七里の渡しは今切の渡しの約5〜7倍の距離があり、伊勢湾という外洋に近い水域を渡るため、危険度も段違いでした。
この規模の違いが、宮宿が東海道最大の宿場に成長した理由の一つです。
区間評価
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 総合難易度 | ― | 徒歩区間ではないため評価対象外です |
| 歴史的価値 | ★★★★★ | 東海道最大の海上路。両端の宿場規模がその重要性を物語ります |
| 見どころ密度 | ★★★★★ | 宮の渡し跡・七里の渡し跡・熱田神宮・桑名城跡と充実しています |
| アクセス利便性 | ★★★★★ | JR・近鉄で約20〜30分。行程への影響は最小限です |
| 体験価値 | ★★★☆☆ | 不定期の遊覧船以外に渡船体験の機会は限られます |
実際に歩いた管理人のひとこと
宮の渡し公園に立った時、「ここから先は海だったのか」という事実に圧倒されました。
今切の渡し(舞阪〜新居)が約4kmだったのに対し、ここは27km。
4時間も船に揺られて伊勢湾を渡るというのは、現代の感覚では想像を超えています。
しかも荒天なら数日足止め。海難事故のリスクもある。
当時の旅人がどれほど不安を抱えてこの渡船場に立っていたかを思うと、胸が締め付けられます。
だからこそ、渡る前に熱田神宮で安全を祈願した。
だからこそ、渡り終えた桑名で旅人は安堵し、宿に飛び込んだ。
宮宿と桑名宿が東海道1位・2位の規模だった理由が、この渡船場に立つと全身で理解できます。
現在はJRで30分。電車の窓から伊勢湾を眺めながら「当時は4時間かかったんだな」と思うと、時代の変化を実感します。
桑名側の七里の渡し跡に着いた時、伊勢国の鳥居を見上げて「三重県に入ったんだ」と感じました。
ここから先は伊勢の国。京都まであと少しです。
まとめ
宮宿〜桑名宿(七里の渡し)は、東海道で最大の海上区間(約27km・所要約4時間)です。
東海道唯一の海上路として江戸時代を通じて機能し、宮宿・桑名宿を東海道1位・2位の巨大宿場に成長させました。
現在は徒歩で渡ることはできませんが、JR関西本線または近鉄名古屋線で約20〜30分で桑名に到着できます。
宮の渡し公園(宮宿側)と七里の渡し跡(桑名宿側)の両方を確認し、東海道最大の渡船区間の歴史を体感してください。
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関連リンク
・出発宿場:宮宿

・到着宿場:桑名宿(鋭意作成中)
・前の区間:鳴海宿〜宮宿

・次の区間:桑名宿〜四日市宿(鋭意作成中)


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