望月宿〜芦田宿|茂田井の酒蔵と農村風景を抜ける中山道5kmの休息区間

望月宿〜芦田宿間から望む立科の雄大な景色 中山道

望月宿を出ると、空気が変わります。商店や旅人の往来で賑わった宿場を抜けた瞬間、目に入るのは一面の田畑と遠くに連なる山並み。ここから芦田宿までの5kmは、中山道の中でも屈指の「静かな区間」です。

茂田井の酒蔵(中山道・望月宿〜芦田宿間)
茂田井間の宿に残る酒蔵。白壁が通り沿いに連なる静かな集落です。

距離は短く、標高差もわずか50m。危険箇所もありません。しかしこの区間を「つまらない」と片付けるのはもったいない。次に控える笠取峠の登りに備えて体力を温存しながら、信州の農村風景をゆっくり味わえる貴重な時間だからです。


この区間の全体像

項目内容
区間望月宿 → 芦田宿
距離5km
所要時間約1時間(時速5km換算)
難易度★☆☆☆☆(平坦〜緩やかな登り)
標高差約50m(700m→750m)
補給区間内に自販機あり・コンビニなし
トイレ望月宿内・芦田宿内で利用可能
最終確認日2026年7月

距離5km、所要1時間。中山道の全区間の中でも最も短い部類に入ります。ただし次の芦田宿〜長久保宿で笠取峠(標高900m)を越えるため、ここで無理をする必要は全くありません。


農村の道を歩く

望月宿の西端を抜けると、すぐに田園風景が広がります。中山道は県道と平行しながら農道のような細い道を進みます。車の通りは少なく、聞こえるのは鳥の声と風の音だけ。

標高700m台の信州の農村です。春は水田に空が映り、夏は青々とした稲穂が揺れ、秋は黄金色の田んぼが広がります。冬は霜が降りた田んぼの間を黙々と歩く。季節ごとに全く違う表情を見せる区間です。

道はほぼ平坦ですが、芦田宿に近づくにつれて微妙に標高が上がっていきます。この緩い登りが、次の笠取峠に向けて地形が変化している証拠です。


補給とトイレ


補給ポイント

この区間にコンビニはありません。自販機が道沿いに1〜2台ある程度です。しっかりした補給が必要な場合は、望月宿内で済ませてから出発してください。

笠取峠から望む景色
笠取峠の松並木(中山道・芦田宿〜長久保宿間)

望月宿には商店がいくつかあり、飲料や軽食は調達できます。芦田宿到着後も商店は限られるため、笠取峠越えの食料・水分は望月で準備するのが確実です。


トイレ

区間の途中にはトイレがありません。望月宿内の公衆トイレ(望月歴史民俗資料館付近)か、芦田宿到着後に利用してください。5kmで1時間の区間なので、出発前に済ませておけば問題ありません。


この区間の見どころ


望月橋と鹿曲川の風景

望月宿の西端、鹿曲川に架かる望月橋からの眺めは印象に残ります。川面に宿場の建物が映り、両岸に木々が張り出す風景は、中山道らしい穏やかさがあります。出発前にぜひ立ち止まってください。


瓜生坂

望月宿を出てしばらくすると「瓜生坂(うりゅうざか)」と呼ばれる小さな坂を越えます。長さは短いですが、ここが望月宿と芦田宿を隔てる小さな峠のような役割を果たしています。坂の上からは芦田方面の農村風景が見渡せます。


茂田井間の宿の面影

望月と芦田の間には「茂田井(もたい)」という集落があります。正式な宿場ではありませんが、中山道の「間の宿」として旅人に休息を提供していた場所です。江戸時代、望月と芦田の間で旅人が一息つく場所として自然発生的に宿場機能を持つようになりました。

現在も大澤酒造・武重本家酒造の2つの造り酒屋が残っています。白壁の蔵が通り沿いに連なり、その間を石垣の水路が流れる風景は、正直なところ前後の宿場よりも絵になります。大澤酒造は「明鏡止水」の銘柄で知られ、直売所で試飲もできます。

ここは中山道歩きの隠れた名所です。観光地化されておらず、観光客はほぼいません。酒蔵の白壁と格子窓、頭上に張り出す蔵の軒先。その間をひとりで歩く時間は贅沢です。時間に余裕があれば、直売所で地酒を1本買って芦田宿で飲むのも良いでしょう。


注意点

この区間に大きな危険箇所はありません。道は明瞭で、迷うポイントもほぼありません。

ただし以下は覚えておいてください。

・県道を横断する箇所が1〜2箇所あり、車に注意
・夏場は日差しを遮る木陰が少ない区間がある(帽子推奨)
・冬場は早朝に路面が凍結していることがある


宿泊情報

この区間は5km・1時間で通過できるため、ここで泊まる必要は通常ありません。

ただし翌日に笠取峠を越える計画の場合、芦田宿に前泊するのも一つの手です。芦田宿周辺には宿泊施設が限られるため、望月宿か立科町方面で宿を探す方が選択肢が多いです。

・望月宿:民宿あり(要事前予約)
・立科町方面:ペンション、旅館あり
・長門牧場方面にも宿泊施設あり


アクセスとエスケープルート

起点(望月宿)へのアクセス:
・佐久平駅(北陸新幹線)からバスで約40分
・望月バス停下車すぐ

終点(芦田宿)からの帰路:
・芦田バス停から佐久平駅方面へバスあり(本数少ない・要時刻確認)
・車利用の場合は望月宿・芦田宿とも駐車可能なスペースあり

エスケープルート:
5kmの平坦区間のため、途中リタイアが必要になることはほぼありません。万が一の場合は県道に出ればバスかタクシーを呼べます。


笠取峠の旧中山道(峠道の様子)

管理人のひとこと

和田峠を越えて下諏訪から南下してきたとき、この区間を逆方向に歩きました。

笠取峠を下り終えた安堵感の中で、目の前に広がる田園風景を見た瞬間、ふっと肩の力が抜けたのを覚えています。それまで山道と格闘していた体が、平坦な道に出た途端「終わった」と反応した感覚。足の裏が地面を踏むリズムが明らかに変わりました。

茂田井の酒蔵を通り過ぎるとき、白壁に西日が当たってオレンジ色に染まっていました。急ぐ理由もないので、しばらく立ち止まって眺めていました。蔵の軒先から覗く空が夕焼け色で、通りには自分の足音だけが響いていた。

この区間は「歩く」というより「散歩する」に近い。中山道には難所も長距離区間もありますが、こういう穏やかな5kmがあるからこそ、歩き続けられるのだと思います。


笠取峠の前に、この静けさを味わう

望月宿〜芦田宿は5km・1時間の短い区間です。難所もなく、補給の心配もほとんどありません。

しかしこの区間には茂田井の酒蔵と白壁の町並み、瓜生坂からの農村風景、そして「中山道にもこんなに穏やかな道がある」という発見があります。中山道69宿の道中で、こういう区間に出会うとほっとします。

次の芦田〜長久保で笠取峠(標高900m)を越えることを考えれば、ここは全力で休む区間です。茂田井で酒蔵を眺め、田んぼの風を浴びながら、焦らず歩いてください。笠取峠のための体力は、ここで貯めておくものです。


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